【救急搬送時のマイナ活用を検証する④】5月から35都道府県660部隊でマイナ活用実験 意識不明者も対象

総務省消防庁は、マイナンバーカードを活用した救急業務の実証実験を全国35都道府県・67消防本部・660救急隊に広げて5月から実施することを発表しました。

しかし、令和4年に実施された救急現場での実証実験では、救急隊到着から出発までの時間がマイナ活用なしの令和3年より6分29秒遅れた結果となりました。

東京消防庁の2023年の東京消防庁救急隊の出場件数は917,472件です。660救急隊での大規模な実証実験により救急現場の足枷とならないか心配されます。

【東京消防庁 報道発表文】「令和5年中の救急出場件数が過去最多を更新」

 

5月から全国的に実施される救急搬送時のマイナ保険証利用の実証実験の準備が進められています。総務省消防庁救急企画室に取材して現状認識を確認しました。令和4年時は顔認証付きカードリーダーを利用して実証実験したことが大失敗と認識していることがわかりました。

顔認証カードリーダーを巡る前回実証実験での失敗

前回令和4年の実証実験では、医療機関で設置されている機器と同等のもの(顔認証付きカードリーダーもしくは汎用性カードリーダー)を使用して救急搬送時に傷病者から同意を取得する手続きを行いました。

マイナカードを所持しマイナ保険証の利用登録を行っていた傷病者295人に対して、顔認証付きカードリーダーによる電磁的同意もしくは汎用性カードリーダーは、書面で個別同意を取得し、オンライン資格確認システムのデータ取得の手続きに入りました。87%にあたる傷病者258人から同意が取得できましたが、傷病者の車内搬入から現場出発まで平均で6分29秒時間を費やしました。

顔認証エラーが足かせ

総務省担当官によると令和4年の実証実験の際は・・・

・マイナ保険証によるデータ取得は通常救急搬送業務に新たに追加した業務のため時間を要した。

・傷病者から書面同意に時間に手間取った。

・背景画像(ストレッチャー等)が顔認証画面に映りエラーが多発した」

5月実証実験での改善点

5月の実証実験で使用する、現場の負担軽減を図る観点から機材は汎用性カードリーダー、モバイルタブレットを使用。ネット接続は無線ですが、インターネットVPNでオンライン資格確認システムへアクセスするとのことです。

また、汎用性カードリーダーを利用して医療情報等を取得する場合、書面同意が必要になりますが、書面ではなく「口頭同意」で対応すべく厚労省等と調整しているとのことです。

意識不明者も実験対象

令和4年時は救急隊長の判断で重傷者、意識不明な傷病者等は実証実験から除外していました。5月からの実証実験では、意識がない傷病者も対象とする方向とのことです。ただし、意識ない人はマイナカード(マイナ保険証)を提示したり、口頭でも同意の意思表明ができないのではと指摘しました。携帯・所持していた場合のみ実証実験の対象とするようです。(救急隊が傷病者の自宅を捜索するなどはしない)

意識不明者本人の同意取得を得ずに救急隊が医療情報を取得することの是非も問われます。救急利用件数は年々増加し、多くは持病がある高齢者ですが、マイナ保険証利用率が4.99%(24年2月)であることから実証実験に適合事例が少ないことが想定されます。医療現場ではマイナ保険証利用が4.99%ですが、95%は患者が保険証を提示し医療機関がオンライン資格確認システムで必要な情報を取得しています。救急搬送時に医療情報取得した実証実験を行うのであれば、現状を追認する形で保険証によるオンライン資格確認システムの利用による実証実験をすべきではないかと指摘しました。

救命救急士以外も医療情報の取得が可能に

令和4年の実証実験では救急救命士のみがオンライン資格確認システムの情報を閲覧できる仕組みでした。救急車に救命救急士が1人いますが、救急救命士の負担軽減を図るため救急隊全員にアカウントを付与して医療情報等を閲覧できるにします。同意取得のあり方や医療情報取得者の範囲拡大など慎重な検討が求められます。また、災害時と同様に4情報のみでオンライン資格確認や医療情報が取得できる「緊急時医療情報・資格確認機能」を利用する方向性も出ているようです。

119番したら「マイナ保険証お持ちですか?」

119番通報したら救急コールセンターから「マイナ保険証お持ちですか?」という声掛けが行われる予定とのことです。「保険証お持ちですか?」という方が現実的ですし、救急時も利用しマイナ保険証利用促進を進める姿勢は問題です。