今、この社会には「ケア」が不足していないだろうか。英語の〈care〉が「心づかい」「世話すること」と訳されるように、医療や福祉など、公的な制度の下で提供されるケアにとどまらず、この言葉が示すものは広範囲に及ぶ。介護、子育て、その他の家事労働については低賃金や無報酬など、低い価値しか認められず、主に女性が担わせられてきた。
　一方、そうした歪みを抱えながらも、資本主義体制の下で効率的に成長する社会が実現されてきたが、急激な少子高齢化や女性の社会進出など、社会構造の変化によって従来の制度が機能不全を起こしており、ヤングケアラーの孤立や介護離職など、様々なほころびが生じている。
　医療を含め、必要な人に十分なケアが提供され、ケアを担う人々も疲弊することなく、ケアの好循環を生み出すために何が必要なのか。ケアを中心に据えた社会のあり方を考える。