【2024年診療報酬改定】特定疾患療養管理料【廃止】の衝撃③ 生活習慣病管理料の置き換えは困難 算定実積は57分の1 

厚労省は、特定疾患療養管理料から糖尿病など3疾患を除外する代わりに新設する生活習慣病管理料(Ⅱ)に移行を促すとしています。

しかし、生活習慣病管理料 (Ⅱ)は、 患者の同意に基づく療養計画を策定」した上、 当該治療計画に基づき、生活習慣に関する総合的な治療管理」を行うことを求めており、患者の署名を得た 療養計画書」策定はじめ、特定疾患療養管理料よりも高い算定要件のハードルが求められます。

糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの患者に対して、医師の裁量・判断で患者の状態に合わせて適切な治療方針を定めています。現状では3疾患の治療でほとんどが特定疾患療養管理料(特定疾患処方管理加算)を算定しています。算定回数で見ると、生活習慣病管理料を1とすると特定疾患療養管理料は57倍と圧倒的な差があります。(生活習慣病管理料の算定回数は約20.3万回、特定疾患療養管理料の算定回数は約1165.5万回 中医協総会資料、2023年11月10日)。一方、生活習慣病管理料(Ⅱ)は、「患者の同意に基づく療養計画を策定」した上、「当該治療計画に基づき、生活習慣に関する総合的な治療管理」を行うことを求めており、特定疾患療養管理料と算定要件が異なります。

57分の1の算定実績しかない点数を持ち出し、3疾患の医学的管理のために多くの医療機関が算定している特定疾患療養管理料を事実上廃止することは、診療所、中小病院の外来医療や医院経営に多大な混乱・影響をもたらします。

 

 患者像と治療戦略が異なる2管理料で棲み分けてきた

糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病は、年齢・進行具合や合併症の有無など症状・程度は様々です。患者像と治療戦略が異なります。そのため診療報酬の算定点数上も臨床対応でも特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料は棲み分けられてきました。生活習慣病管理料と特定疾患療養管理料では患者像が異なり治療戦略の策定・説明なども異なってくる以上、特定疾患療養管理料から3疾患を外すことは不合理です。特定疾患療養管理料からの3疾患除外は、医師が現に発揮している医学管理・医療技術を否定するものと言わざるを得ません。

 

生活習慣病管理料  算定回数20.3万回/年間

糖尿病、高血圧、脂質異常症の中等症以上で介入・管理の強化を要する患者を念頭に置いた点数です。生活習慣病管理料(対象は糖尿病、高血圧、脂質異常症)は、中等度以上はじめ治療管理の強化を要する患者について、検査数値目標などを設定して、生活習慣(食事、運動、喫煙・飲酒、仕事・余暇・睡眠、減量など)に対して専門的・総合的な治療管理を行うことを評価したものです。患者の同意(署名)を得た「療養計画書」を定めて、総合的な治療管理を行います。

特定疾患療養管理料 1165.5万回/年間

年齢・進行具合や合併症の有無など症状・程度は異なるため、生活習慣病管理で求める「療養計画書」まで策定しなくても、治療計画を念頭に必要・効果的な指導(例えば、家庭での血圧測定、調味料はなるべく減塩、麺類の汁は残すなど)や検査計画などを随時、患者に伝えながら治療を進めている場合もあります。こうした現場の実態を適切に評価した点数。日常診療では特定疾患管理料を算定する患者が圧倒的に多く、生活習慣病管理料を算定する患者の57倍となります。